ロスとは
小売業は仕入れた商品を販売するのが目的ですが、何らかの理由で仕入れた商品が販売できない、本来なら売れていた金額で売れなかった、となる場合があります。
これを「ロス」と言います。
小売業も一般の消費者のようにお金を払って商品を買っています。買った商品が、売れるはずだったのに売れなくなる、ということは大きなマイナスであり、ロスが増えることはお店の経営自体にも大きく影響がでることになります。
ロスの計算
商品Aが1個破損し、販売できなくなりました。
その時商品Aは「ロス」となりますが、お店としてはいくらのマイナスになるでしょうか。
500円で仕入れたから500円がマイナスになったんじゃないのか!?
答えは「売価の1000円」です。
小売業の世界では「本当はこの商品が売れて1,000円の売上があったはずなのになくなった」と考えるので1,000円のマイナスが発生したと考えます。なのでロス金額は売価となります。
「ロス=その商品の売価」と考える。
ロスの種類
廃棄ロス
商品の賞味期限が切れた、中身が明らかに劣化している、などの理由により廃棄しないといけなくなった場合に発生するロスです。
値下げロス
商品を処分するときなどに本来の値段から値引きして販売します。その値引き分をロスと考えます。しかし、お店の中で値引きしている商品は多く、値引きしただけで商品が無くなるわけではないのでロスとして計算しない場合もあります。
盗難ロス
万引きによりあるはずの商品がなくなった場合に発生するロスです。商品がなくなった場合、お金を出して仕入れた商品を無料であげたのと同じことになるためお店にとっては大きな損になります。
機会(チャンス)ロス
お客さんが欲しい商品が在庫がないため販売ができなかったことによるロスです。本来なら売上となっていた分が売上にならなかったことからロスと言いますが、他のロスのように商品が無くなるわけではないのでロスとして計算しない場合も多いです。
- 判明ロス:廃棄ロス、値下げロスなど理由が判明しているロス
- 不明ロス:盗難ロス、機会(チャンス)ロスなどいつ発生したか気付かないロス(盗難は気付いていれば判明ロスとして処理する)
ロス率
ロス率とはお店の売上に対してどれぐらいのロスが発生したかと表す数値です。
ロス率は以下の計算で求められます。
\(\bf判明ロス=(商品の売価)×(ロスした個数)+(値引きした金額)×(値引きした個数)\)
不明ロス=データ上あるべき在庫金額ー期末の在庫金額
データ上あるべき在庫金額=期首在庫金額+仕入金額ー売上ー判明ロス
\(ロス率(%)=\rm\large\bf\frac{判明ロス+不明ロス}{売上金額}\)×100
判明ロスは商品の売価やロスになった個数がわかるため簡単に計算できますが、盗難などの不明ロスはいくらロスしたか分かりません。そのため不明ロスは、データ上あるはずの商品の金額と実際にお店にある商品の金額が合っているか確かめてその差を見て確かめます。
実際に例を見ながら計算していきましょう。
まずはロスの金額を計算していきます。
\(\bf判明ロス=(商品の売価)×(ロスした個数)+(値引きした金額)×(値引きした個数)\)
\( =1,000×5+500×2\)
\( =6,000\)
続いて不明ロス、
\(\bf不明ロス=データ上あるべき在庫金額ー期末の在庫金額\)
\(\bf =(期首在庫金額+仕入金額ー売上ー判明ロス)ー期末の在庫金額\)
\( =(200,000+100,000ー100,000ー6,000)ー190,000\)
\( =194,000ー190,000\)
\( =4,000\)
期首在庫金額(初めの在庫金額)が¥200,000、途中で¥100,000仕入れました(仕入金額)。この期間で¥100,000売れて、¥6,000のロスが出たのでデータ上あるべき在庫金額は¥194,000のはずです。
しかし実際には¥190,000しかなくその差が不明ロスとなります。
これよりロス率は
\(\bfロス率(%)=\rm\large\bf\frac{判明ロス+不明ロス}{売上金額}\)×100
\( =\rm\large\bf\frac{6,000+4,000}{100,000}\)×100
\( =10\%\)
となります。
業界にもよりますがロス率は0.5~1%前後までが通常です。
ロスへの対策
商品管理の徹底
期限切れ、商品の劣化などにより商品を廃棄せざるを得ない場合があります。商品の管理を徹底し、廃棄せざるを得ない商品自体の数を減らすことが重要です。
廃棄前の売切り
商品管理を徹底し、期限切れになどで廃棄なる前に値引きをして売切りをすることで、ロスを最小限にとどめてお店の利益を守ることができます。
防犯の徹底
不明ロスの多くは万引きによるものです。防犯カメラやミラーの設置。常に従業員が売場を巡回する体制作りをし、すれ違うときのお客さんへの挨拶をするなども万引き犯は顔を見られたと思うので未然に万引きを防ぐことができます。